あなたの人生を輝かせるコミュニケーションの力
A New way of Improving & Caring for Oneself


                              室 伏 順 子
オプション・メニュー              ソフィア ヒューマン キャピタル(株) 代表取締役社長

 §45.顧客満足


 一昔前から、顧客満足という言葉が、どんな業界のどんな職種の方にも必要になってきています。それは、製品の優位性が保てる期間がとても短くなり、同じような製品が市場にあふれる時代となって、人が物を買ったりお付き合いをする基準が、製品力ではなく人的サービス、つまりその社員や関係する方々がどんなふうに応対してくれるか、ということに移っていったからです。

 そして、今はさらに進んで、そこと関わることが快適かどうか、自分の理念にあっているかどうか、価値が感じられるかどうか、ということが選択の基準になってきているように感じます。

 もともと、お客さまというものは、完全なものが何の誤りもなく提供されて“当たり前”と感じます。ですから、さらに他とは違う一味をつけようと思ったら、お客さまの思ってもみなかったこと、期待を上回る価値を提供することが必要です。そうして初めて、お客さまは“満足”を感じるのです。そして最初は“満足”と感じられたことも、2度、3度と経験するうちに、今度はそれが“当たり前”と感じられるようになってきてしまうのです。

 さらに、お客さまは、あなたのサービスを無意識に何と比較しているかといえば、競合他社のそれとではなくて、今まで経験した一番素晴らしいサービスと比較しているとも言われています。

 つまり、顧客満足を考えるということは、これでいい、という終わりがなく、絶え間ない向上をめざすことになります。

 そのために、この分野では、いろいろな調査や分析も盛んです。ミステリーショッパーという言葉が最近は新聞でも見られるようになりましたが、これはお客さまを装った調査員が、秘密裡に自社のサービスのようすをチェックするのものです。実際どんなことをするかというと、これが大変面白いのですが、ことがことだけに、ここで暴露するわけにはいきません。あなたも知らないうちに調査されているかもしれませんね。

 皆さんも、人的なサービスで嫌な思いをした時、いちいちクレームなどせず、他のお店や製品に鞍替えしてしまうことが多いことと思います。“どうせこんなものだろう、クレームするだけ疲れる”と思う方がほとんどで、クレームする方はわずか4%だそうです。ですから、逆にクレームはとても貴重です。あるコンピュータ・メーカーのサポート・センターの女性は、配属されたばかりの頃はクレームの電話に怯えていたそうですが、ある時からクレームの貴重さを知り、それにきちんと対応した時のお客さまの喜びを経験して、今ではクレームとわかるとエネルギーが沸いてくるのだと話してくれました。

 嫌な思いをしたお客さまの過半数は、その経験を身近にいる複数の方にしゃべりますし、そこからさらにまた口伝てに広まります。一人の方に与えた不満足な経験は、こうして、とほうもなく広がっていきます。今はインターネットがありますから、以前とは比べものにならないくらい広く広まってしまいますね。

 ところで、皆さんは、お客さまの立場として、とても満足した経験、感動した体験がありますか?セミナーで、参加者におききしてみると、意外に些細なことに感動していらっしゃいます。それは、自分を覚えていてくれて他のお客さまとちょっと違う応対をしてくれたり、一言心のこもった言葉をかけてくれたり、こちらの立場や気持ちを理解してくれた上でちょっとした心がけをしてくれたり、といったことがほとんどです。

 私の友人は、オーランドのディズニーワールド内のホテルで、こんな素敵な経験をした知り合いの話をしてくれました。

 家族で宿泊したそのホテルでのことです。子供がもう嬉しくて心がはやって仕方がなかったのでしょう、パジャマを床に脱ぎ捨てたまま、出かけてしまいました。そして夢のように楽しかったであろう一日を終えてホテルに戻り部屋に入ったとたん、一家は、驚嘆の声をあげたそうです。そこには、何があったと思いますか?

 ミッキーがベッドの上でおかえりなさい、をしてくれたのです。脱ぎ捨てたパジャマが、ベッドの上で、右手を上げた形に整えられ、顔の部分には、ミッキーの顔の形をした石鹸の箱が置かれていたのです。こういった小さな感動が、もう一度お客さまを連れてくるのですね。

 このようなことのできるメイドさんは、どのようにして育成されるのでしょう?ディズニーランドの社員教育は、完璧に整備された厚いマニュアルを、長い期間にわたるセミナーでしっかりと身につけた最後に、こう締めくくられます。“お疲れさまでした。今日までに学んだことは、あなたの仕事の半分です。あとの半分は、あなたの今までの経験や智恵をもとに、あなた自身が創りあげていって下さい。”と。

 プレゼントをつけたり、値引きをしたりというサービスもあります。これは、しかしコストに関係しますので、無造作にはできません。そしてまた、そうしてもらったお客さまは、その時は喜ぶと思いますが、どうでしょう、このミッキーのパジャマのように、海を越えて人から人へ語り継がれるほどの感動を生むでしょうか?

 人が介在することの素晴らしさは、こんな価値を創りだすことにあると思うのです。そして、これには、コストはほとんどかかりませんし、それを提供するサービス提供者にも、たいした時間も手間もかかりません。

 対面のコミュニケーションであれば、第2章 T §24の“コミュニケーションの流れ”を意識し、とくに§26“相手を知る”を心がけることが、お客さまのサイドから見ると、“顧客満足度の高い応対”のキーになってきます。

 そして、いつでもものごとには“事実的側面”と“意見、希望、考え、感情の側面”があることを忘れないことです。つまり、質問していく時はその両方をきくようにし、相手が話してくれたことに共感していく時も、その両方を口に出して、理解していることを伝えることがポイントです。とくに、顧客満足というのは、“感情”ですから、これをないがしろにしては、どれほど、事実的側面では特別扱いしたところで、不満を残しかねません。サービスを提供する側のスタンスで、“これだけのことをしてさしあげた”ところで意味はなく、お客さまがどのように感じたか、が基準になるのです。

 お客さまがどうして欲しいのかわからない時は、あて推量でいい加減なことをするより、きいてみることです。そのために、顧客満足を真剣に考える会社はどちらも、お客さまの声を少しでもたくさんあつめるシステム作りに腐心しています。そうして集まったデータは、同じ客層をもつ別の業界から、引き合いがくるほど貴重なものなのです。

 あなたの個性、知性、経験、思いやり、人生観、価値観が生きるそんなサービス、仕事振りを、心がけてみませんか?





 前へ                              次へ

            
■ 目 次 ■
プロローグ (2001.12.11)
第1章 自分を知る、自分を探す
T.人とのかかわりのなかで、自分をみつめなおす
 §1.コミュニケーションのタイプ (2001.12.27)
 §2.ソーシャル・スタイル (2002.01.08)
U.2つの切り口
 §3.思考表現度とは (2002.01.15)
 §4.思考表現度の高い方の特徴 (2002.01.22)
 §5.思考表現度の低い方の特徴 (2002.01.29)
 §6.感情表現度とは (2002.02.05)
 §7.感情表現度の高い方の特徴 (2002.02.13)
 §8.感情表現度の低い方の特徴 (2002.02.19)
V.4つのスタイル
 §9.人から見た私 (2002.02.26)
 §10. アナリティカル/思考派 の特徴 (2002.03.04)
 §11.ドライバー/行動派の特徴 (2002.03.12)
 §12.エミアブル/協調派の特徴 (2002.04.04)
 §13.エクスプレッシブ/感覚派の特徴 (2002.04.09)
 §14.自分が知っている私、人から見た私 (2002.04.17)
W.あなたを活かす
 §15.ソーシャル・スタイルの活かし方 (2002.04.23)
 §16.アナリティカル/思考派
                あなたの強みと弱み
(2002.05.07)
 §17.ドライバー/行動派の
                あなたの強みと弱み
(2002.05.13)
 §18.エミアブル/協調派の
                あなたの強みと弱み
(2002.05.27)
 §19.エクスプレッシブ/感覚派の
                あなたの強みと弱み
(2002.06.04)
 §20.スタイルの活かし方 (2002.06.14)
 §21.あなたの活かし方 (2002.06.20)
 §22.人との違いを知ることで見えてくるもの (2002.07.05)
 §23.ストレスなく相手と合わせるコツ (2002.07.16)
第2章 自分を育てる
T.相手の立場にたつということ
 §24.コミュニケーションの流れ (2002.07.24)
 §25.話のできる関係を作る (2002.07.30)
 §26.相手を知る (2002.08.09)
 §27.それに応える (2002.08.27)
 §28.合意する (2002.09.11)
U.話を聴くということ
 §29.聴くことの威力 (2002.10.07)
 §30.聴く力とは (2002.10.16)
 §31.対人過敏性 (2002.10.29)
 §32.質問のスキル 〜1/10〜 (2002.11.07)
   1.事実と意見 〜2/10〜 (2002.11.13)
   2.直接と間接 〜3/10〜 (2002.11.19)
   3.気にっていることと
            気に入らないこと
〜4/10〜 (2002.11.27)
   4.魔法の杖 〜5/10〜 (2002.12.06)
   5.問い返すということ 〜6/10〜 (2002.12.13)
   6.わからない時は? 〜7/10〜 (2002.12.19)
   7.相手の答えを
          
コントロールすること
〜8/10〜 (2002.12.26)
   8.5W1Hが教えてくれること 〜9/10〜 (2003.01.08)
   9.質問を受けるということ 〜10/10〜 (2003.01.16)
 §33.傾聴のスキル (2003.01.24)
 §34.情報マイニング (2003.01.30)
V.話すということ
 §35.話す目的 (2003.02.06)
 §36.準備すること (2003.02.14)
 §37.話の組み立て
   1.序論 〜1/3〜 (2003.02.21)
   2.本論 〜2/3〜 (2003.03.05)
   3.結論 〜3/3〜 (2003.03.14)
 §38.説明のスキル (2003.03.25)
 §39.話し方 (2003.04.01)
 §40.立ち居振舞い (2003.04.11)
W.納得していただくということ
 §41.創造的問題解決法 (2003.04.18)
 §42.交渉していく場合 (2003.04.25)
 §43.Noという場合 (2003.05.09)
X.喜んでいただくということ
 §44.自分を活かす (2003.05.16)
 §45.顧客満足 (2003.05.23)
 §46.ホスピタリティー (2003.06.05)
Y.自分を育てるということ
 §47.自分を育てるということ (2003.06.20)
第3章 新しい出発
T.セルフ・リーダーシップ
 §48.新しいリーダシップ (2003.08.29)
 §49.セルフ・リーダーシップ・スキル (2003.09.05)
U.セルフ・コントロール
 §50.思考・感情・言動の関係 (2003.09.12)
 §51.思考の働き (2003.09.19)
 §52.思考を変える、自分を変える (2003.09.26)
V.今を生きる
 §53.過去・現在・未来 (2003.10.03)
 §54.過去を生きる、今を生きる (2003.10.14)
W.関係性から離れる
 §55.関係性の幻想 (2004.01.07)
 §56.個を生きる (2004.01.26)
 §57.知恵を取り戻す (2005.03.07)
 §58.知るということ (2005.03.07)
X.夢を育てる
 §59.必要なだけの努力 (2005.03.07)
 §60.あなたを満たす10のメニュー (2005.03.07)
 §61.あなたを満たすと起ること (2005.03.07)
Y.自分自身になる
 §62.価値の転換 (2005.03.07)
 §63.自分自身になる (2005.03.07)

Sophia Human Capital 2002-2005 (C) All Rights Reserved