Vol.28:暗黙知を大切に

先日、どこかのニュースで「暗黙知」をテーマにした特集がありました。

団塊の世代が大量退職するであろう今年から、団塊の世代が持つ「暗黙知」をどうやって後進に伝えるか・・・ある企業の取り組みを伝えるものでした。

「暗黙知」に対する言葉に「形式知」がありますね。

・・・大雑把に説明すると、

「形式知」=文章、数学的表現、マニュアルといった形式や言語によって表すことができ、容易に伝達できる知識
「暗黙知」=信念、ものの見方・考え方、価値と言った無形の要素で個人の体験に根ざした伝達の難しい無形の知識

となります。

私が初めて「暗黙知」という言葉を聞いたのは社内のナレッジマネジメントシステムの開発サポートに入った時でした。

当時、ナレッジマネジメントという言葉から、単純に「社内の提案事例や提案書を共有できるようにする」ことがシステムの目的と私は理解していたのです。

ですから、開発リーダの

「今、開発しているのは、個人が所蔵している暗黙知形式知をシェアするシステムです」

という説明を聞いても、勉強不足の私は

形式知だの暗黙知だのって何?要は資料が共有できればいいんじゃねーの?」

と考えていたのです。

開発の初期Phaseは、私が考えていたように、社内の提案事例や提案書のシェアを目的としていましたが、次期Phaseになると(役職毎のアクセス制限はありましたが)社員の取得資格やプロジェクト経験、職歴等のシェアを目的としたものになっていました。

当時の会社の方針で、部署横断的にプロジェクトを立ち上げるため(=要は、リソースをかき集めるため)どの人材がどのスキルを有しているかを知る手段として、このシステムが活用されようとしていたのです。

そこで、ちょっとだけ勉強した私は、開発リーダに突っ込みを入れてしまいました。

「資格とか、プロジェクト経験って暗黙知じゃないやろ?資格を取得してなくても、できる人いるしー?」

・・・開発リーダも、私に言われるまでもなく、この状況は分かっていたと思います。(あの時、突っ込んで済みません)

・・・とはいえ、そもそも無形の知識=「暗黙知」をどうやって共有するのか?・・・

自分の頭の中で禅問答になるのを避けるように、しばらく「暗黙知」については忘れていました。

次に「暗黙知」という言葉を聞いたのは、ある企業から、営業ノウハウをテキストにまとめて研修を実施したい、という要望を頂いて、研修の実現にむけて室伏さんとMTGしていた時でした。

何かの拍子に「暗黙知(=営業ノウハウ)を形式知(=テキスト)にすることは会社にとっては財産だし、かけがえのないものよね・・・」と、室伏さんがつぶやいたのです。

:「財産であることは同意。でも、暗黙知を持っている人にその自覚がないから、形式知にできないのでは?」
室伏 :「だから、研修があるんじゃない・・・」

実は、企業の研修をオブザーブしていると、研修中に受講者同士が「暗黙知の共有を始める」場面に出会うことがあります。

研修の種類を問わず、研修で”自身の経験を話す”ような場があると、時間とともに自然と”暗黙知”の共有になっていくのです。

「最近うちのプロジェクトは火を噴いてしまって、人手不足で・・・」
「俺のプロジェクトも似たような環境だけど、・・・といった体制をとってトラブルを防いでいるよ。理由は・・・効果は・・・」
「それ、うちでも使えるかもしれない。でも・・・の場合はどうしてる?」
「使えるかどうか分からないけど、前の部署では・・・・というようにしたことが・・・」

そこで、話し合った内容をまとめて紙に書き留め、研修の場で発表することで、更に研修に参加した受講者全員が「暗黙知」を共有できるわけです。

先のニュースでは、社員間の縦のつながりの弱さが「暗黙知」が伝わりにくくなった原因、と語られていたと思います。

研修という場は、縦のつながりも横のつながりも、一瞬復活することができる場になっているのかもしれませんね。

<後日談>
最近、私は今更ながらプロジェクトマネジメント研修を受講していました(^^;)。普段なら気にもとめなかったのでしょうが、1日間であったことから、勉強がてら受講してみようと思ったのです。

この研修テキストのコラム欄に

プロジェクト(特にソフトウェア開発プロジェクト)を見ると、暗黙知を軽視して来たことは否めない。本屋に行けば、プロジェクト管理の解説書、それも選りすぐりの良書が山と積まれているが、プロジェクトにおける知識創造のメカニズムを論じた書籍はまずない。

という文章がありました。
プロジェクトマネジメントもそろそろ暗黙知を重視か?と感慨深い1日でした。

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コメント

ある企業のメイン部署の暗黙知を形式知化するコンサルティングを、
足掛け6年ほどやってきましたが、ここにきてやっと私がいなくても、
回っていくようになりました。
感無量です。
この経験を通して、私のコンサルティング能力も、
半端でなく磨かれました。
1000名ものその道のプロの経験、知識を智恵にしていくプロセスは、
大胆な戦略とともに、絶え間ない繊細なコーチングが必要であり、
多大なエネルギーをかけたものですが、それだけの価値のある仕事でした。

今、現在進行中のプロジェクトは500名の管理職を対象とし、
まったく異なるアプローチを取っていますが、
『世界初』と称されてベンチマークされつつ、
日々、邁進しています。

しかし、こういう仕事って、
本当にコンサルタント冥利につきますね。
人が自分の暗黙知を形式知化できたときには、
しばしば涙を流したりもするんです。
そんな場面に無数に立ちあえるって、
この世で経験できることの中でも、
至上のものだと思います。

今年も、いい仕事をしていきましょうね!

室伏順子|2007年01月27日

室伏さん、こんばんは
私も室伏さんと仕事をご一緒するようになってから、幾度も受講者が暗黙知を形式知にする場面に立ち会う機会がありました。本当の研修の効果というのはこういう経験をすることにあるんだろうな、と、私自身、何度も様々な研修を受けているにも関わらず、感動を覚えたものです。今年出会うであろう受講者の皆様にも、研修を通してよい経験をして頂けるよう、サポートしていかねばなりませんね。

solmic|2007年01月28日

研修の真髄とはなんぞや、ということがずしっと腑に落ちたような気持ちでおります。。何度も読み返しをさせていただき、深く心に刻み込みました。うちのスタッフにもsolmicさんのブログをすべてじっくり読むように今日伝えました。彼女は早速読み込んでいるはずです。学ぶことばかりです、本当にありがとうございます!

mihoyo|2007年01月30日

mihoyoさん、こんばんは
この業界では、まだまだ未熟者ですので、このようなコメントを頂き、とても恐縮しています(汗)。私も、日々皆様から多くにことを学ばせて頂いていることに感謝しています。これからもよろしくお願い致します。

solmic|2007年01月31日