Vol.34:暗黙知を大切に【番外編】 |
「Vol28:暗黙知を大切に」にて、団塊の世代が持つ「暗黙知」をどうやって後進に伝えるか、というある企業の取り組みについて少し触れましたが、先輩社員が後輩に「暗黙知」を伝える上で障害が発生してしまう・・・そんなケースに出会いました。
ヒアリングに伺ったお客様先(仮にA社とします)では、会社全体で「見える化」に取り組もうとしていました。
「暗黙知」もさりながら「見える化」も最近、育成・研修の様々な場面でよく聞かれるようになった言葉です。
書籍などでは「見える化」は現場力の向上を目的としており
・問題解決に対する「当事者意識」
・全員理解・参加の「組織能力」
・高い志による「優位性構築」
が揃って、現場力が発揮されると書かれていたりします。
A社は製造業で、以前から現場力の強化・向上を意識した育成・研修に熱心に取り組んでいました。
このような背景もあり、最初にA社の育成担当者にヒアリングに伺った時
現場力向上のため、まず『全員理解・参加の「組織能力」』を会社全体で取り組み、それが社員全体に根付いた段階で『問題解決に対する「当事者意識」』『高い志による「優位性構築」』を高める上で必要となるスキルやマインドの向上を研修で行おうと企画している
と熱心にご説明頂いたのです。
私も、A社の育成担当者の熱意を受けて、この全社的な取り組みを是非応援したいと考え、定期的に情報交換を行っていました。
・・・最初のヒアリングから半年経ってMTGした際に、育成担当者からこんな言葉を聞いたのです。
「solmicさん、実は中々思うように進まないのですよ。特に全員理解・参加の部分がね。うちも現場力向上に手をつけた時”全員理解”の考えから、先に先輩社員が持つ知恵を、後輩に伝えることから始めようと”知恵の見える化”(=暗黙知の継承、ですね)から手をつけたんですよ。これが・・・うまくいかないのですよ。」
・・・状況を詳しく伺っていくうちに、以下の状況が浮かび上がってきました。
A社は、他社との合併・提携を繰り返し、現在の体制に落ち着いた、という歴史を持っています。そのような合併・提携を繰り返す中で、大規模リストラを定期的に行っていました。(おそらく、合併された側の会社の社員に対してのリストラが中心になっていたのでしょう。)
ある合併によりA社は、他社と比較して優位にある売れ筋製品&ソリューションを手にしました。
今回、A社の担当者が最初に手をつけたのが、この売れ筋製品&ソリューション(=仮に製品Xとします)に関する”知恵の見える化”でした。
この製品Xの担当者達は、合併された側の会社の社員で、これまで苦楽を共にした仲間達が次々とリストラされる中、今日までA社に踏みとどまってきた人達だったのです。
当初、製品Xの担当者達は、育成担当者からの「見える化」についての説明を、特に何の反応もなく聞いていたそうです。ところが・・・いつまでたっても進まない、情報(知恵&経験)の開示に、現場(後輩社員)からクレームがあがってくるようになったのです。
育成担当者が時間を作っては頻繁に、製品Xの担当者(リーダ)と話すように努めてみた所、リーダからこのように言われたのだそうです。
「そもそも「見える化」できるような製品じゃありませんよ。」
「情報は全て私が持っています。なぜか私の所に情報が全て集まってきちゃうんですよね。」
「そもそも、製品Xに対して、どの社員も”自分には難しい”というような苦手意識が強いんじゃないですか?社員にやる気がないってことだと思いますが?違う?」
育成担当者は、このリーダに、暗黙知を形式知にすることの重要性を説いたのですが、リーダは急に語気を荒げてこう叫んだそうです。
「これは俺の仕事だ!誰にも渡すものか!情報が欲しいなら、自分達だけでやれよ。」
「そうやって、また俺達の仕事を奪って、リストラするのかっ!」
これには、育成担当者もどう反応していいやら・・・途方に暮れてしまったのです・・・
solmicも現在、合併を繰り返してきた外資系企業に属していますから、このリーダの気持ちは推察することができます。「これまで、自分達を軽視した扱いをしてきたくせに、何を頼っているんだ。今更、都合のいいことを言うんじゃない。」と、そんな気持ちなのではないかと・・・
確かに「Vol28:暗黙知を大切に」で記載した内容は、その会社に長年継続勤務してきた団塊の世代から後進への「暗黙知」の継承でした。
「暗黙知」の継承には、会社の歴史、バックボーンを意識して企画・研修を進めないと混乱をきたしてしまうケースもある、という、決して他人事ではない、複雑な一面に・・・深く考えさせられてしまいました。
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