Vol.40:ドレスコード(2)

「マナー研修」を我々に依頼する企業には、必ずと言っていいほど、裏に”お客様からのクレームに対応しなくては”とか”社内の風土や文化を変えたい”という思惑が含まれています。

これをヒアリングし、何を「マナー研修」のゴールにするかを決めるまでには、通常の研修依頼よりも時間がかかります。何と言っても、全社的な動きが必要となる(=トップダウンによる指示が必要となる)ためです。

人事・育成担当者が、現場やその企業のお客様からの声を反映して研修を企画しても、トップの
「特に社内の雰囲気に問題があると思えない」
「カジュアルデーは時代の最先端だから、今のままでよい」
(←本当に最先端なのか?と突っ込み)
という鶴の一声で、企画倒れになる可能性が高いのです。

ですから、まずは、その企業のお客様からのアンケートやCS評価等を数値化し、現実を理解して頂くことから始めることが多いのです。(数値で示されて反論する方は、まずいらっしゃいません(^^;))

・・・そんなこんなで「マナー研修」の実施に入るのですが、想定通りに終了したことは、まずありません・‥

ある企業の営業担当者向けに「マナー研修」を実施した時のことです。基本的な立ち居振る舞い、髪型、服装についての講義とロールプレイが終了した段階で、ある若手社員から質問が出たのです。

「今まで、ネクタイ締める機会がほとんど無かったので、いつもネクタイを輪っかにして机の上においているんですが・・・それでもうまく締められないことがあって・・・時間が無くてノーネクタイでお客様先に行っちゃったり・・・これってNGですか?」

てっきり、この社員だけかと思いきや、他の若手社員からも「あ、俺も」「実は、俺も」の大合唱・・・急遽、講師と相談し、「ネクタイの締め方講座」を追加しました。

この研修に参加していた営業担当者達に聞いた所では、この企業では、10年位前にカジュアルデーが導入され、当初は、金曜日のみがカジュアルデーだったのだそうです。今回の受講者の皆様が所属している営業部でも”カジュアルデーを利用したいなぁ”と思いつつ、当初は、総務部からのチェックが厳しく、ビジネスカジュアル、ノーネクタイといった社員は、ほとんどいなかったらしいのです。

ところが、カジュアルデーを通知し、違反者に注意を与えていた総務部とは、オフィス移転で別のビルになってしまったことで、営業部は、なし崩し的に”エブリデー・カジュアルデー”に移行してしまったのだそうです。この営業担当者達が訪問するお客様先は、ビジネスカジュアルを導入している企業が多かったため、特にクレームを受けることが無く、そして総務部側でも毎日チェックするわけにもいかず・・・双方が特に支障はないと考え、現在に至ったようなのです。

一緒にオブザーブしていた人事・育成担当者も、このネクタイの件には驚いたらしく、この時点で、ようやくこの「マナー研修」の実施に至った経緯を(本音ベースで)話してくれました。

この企業が主催した、何らかの記念パーティーの時のことです。豪華なホテルでの立食パーティーで、日頃懇意にしている社外のお客様(←もちろんかなりの上役の方々)をご招待していたことから、この機会を活用してもらおうと営業担当者達に参加するよう声をかけたのだそうです。

しかし、営業担当者達の大半が、平然と私服で現れ、周囲の視線に臆することなく、社外のお客様よりも先に食事を堪能していたことで、後日、社外のお客様よりクレームが殺到したのだそうです。

この事例は余りにも極端な話、と思われるかもしれませんが、実話なのです・・・

この企業の営業担当者達は、自社の常識が他社の非常識になり得るということを考える機会が無かったため、どんどんエスカレートし、ここまでの事態を引き起こすに至ってしまったのです。

カジュアルデーやビジネスカジュアルについて、solmicは反対派という訳ではありません。ビジネスカジュアルであれば、何よりリラックス効果がありますし、泊り込みで仕事をする人であれば、スーツより快適だと思います。本来は、ビジネスカジュアルに限らず、各人が考え、その場に応じた格好をしていれば問題は無いはずなのです。

今、多くの企業が、ビジネスカジュアルに伴うドレスコードの再周知に着手しているのも、各人が考え、その場に応じた格好ができていないからなのかもしれません(←以前書いた「想像力」や「空気を読む」ということにつながるのか?)。ドレスコードには、相手に不快な思いさせないようにするための最低限の規定が書いてあります。要は、相手への思いやり、礼儀なのですけどね・・・

表の青山 | 2007年03月09日
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