ソーシャルスタイル

室伏順子
ソフィア ヒューマン キャピタル(株)代表取締役社長
参考書籍: 室伏順子『苦手を克服する ソーシャルスタイル仕事術』(クロスメディア・パブリッシング)
■ 目 次 ■
自分を知る、自分を探す
T.人とのかかわりのなかで、自分をみつめなおす
§1.コミュニケーションのタイプ
§2.ソーシャル・スタイル
U.2つの切り口
§3.思考表現度とは
§4.思考表現度の高い方の特徴
§5.思考表現度の低い方の特徴
§6.感情表現度とは
§7.感情表現度の高い方の特徴
§8.感情表現度の低い方の特徴
V.4つのスタイル
§9.人から見た私
§10. アナリティカル/思考派 の特徴
§11.ドライバー/行動派の特徴
§12.エミアブル/協調派の特徴
§13.エクスプレッシブ/感覚派の特徴
§14.自分が知っている私、人から見た私
W.あなたを活かす
§15.ソーシャル・スタイルの活かし方
§16.アナリティカル/思考派のあなたの強みと弱み
§17.ドライバー/行動派のあなたの強みと弱み
§18.エミアブル/協調派のあなたの強みと弱み
§19.エクスプレッシブ/感覚派のあなたの強みと弱み
§20.スタイルの活かし方
§21.あなたの活かし方
§22.人との違いを知ることで見えてくるもの
§23.ストレスなく相手と合わせるコツ

自分を知る、自分を探す

T.人とのかかわりのなかで、自分をみつめなおす

§1.コミュニケーションのタイプ

人は誰でも、かけがえのない存在で、誰一人として同じ方はいらっしゃいません。でも、その方の行動や、話し方に着目すると、人によって、一定のパターンというのが、見られますね。

たとえば、そろそろ今日の仕事も目途がつく、という金曜日の夕方、携帯電話がなったとします。ディスプレーの表示を見ると、友人のA子です。こちらが“はい”と言って出た途端、いつもの、元気な張りのある声が飛び込んできました。“ねぇ〜、今晩、軽く飲まない?青山に、すっごく素敵な大人のバーを見つけたのよ!あなたもぜったい、気に入ると思うわ!8時頃、どうかしら?私は、7時過ぎにはなんとか出られそうなの。是非、行きましょうよ、ね!”と、すこしアップテンポの軽快な口調で、一気にしゃべっています。“ああ、A子らしいな”と思いながら、あなたは聴いています。

おなじシチュエーションでも、B子は、違います。こちらが電話をとると、一呼吸置いてから、ゆっくりと話し始めます。“今、お電話して、大丈夫かしら?…ご無沙汰しています。お元気?…今日は、仕事、遅くまでかかりそう?いえ、いえ、お忙しいなら、いいのだけれど…”こちらの返答を待ちながら、なかなか用件を切り出しません。それを聴きながら、あなたは、ピンときます。“B子、もしかしたら、今晩、一緒に飲みたくて電話してきたのではないかしら?B子って、いつもそうなのよね、自分から行こう、行こうとは、いわないのよね”と。

A子も、B子も、今晩あなたと一緒に過ごしたくて電話をしてきたのですが、その誘い方や話し方は、ずいぶん、違いますね。あなたのまわりにも、A子やB子に似たタイプの方がいらっしゃるのではないですか?

このように、人の行動、話し方に着目すると、いくつかのパターン、タイプが浮かび上がってきます。ある物差しに従って、自分を把握し、人との違いを知ることは、まわりの方とよりいい関係を築いていくのに役に立ちます。まさに、人間関係・コミュニケーションの力を磨いていくことになるのです。

§2.ソーシャル・スタイル

さて、そのコミュニケーションのタイプを考える時、ソーシャル・スタイルという理論があります。これは、まわりの方が認める、個人の、習慣化した行動のパターン、という意味です。

A子は、皆といると元気のいい明るい声でよくしゃべり、いつものメンバーで食事にいこうなどという話になれば、“いこう、いこう!”と決めるのも速く、お店を探すなどの行動も素早く、あっという間に話をまとめてしまいます。

一方、B子は、A子がサクサクとことを進めている間、みんなのようすを気にかけたり、誰かに負担がからないよう気を使ったり、場所を決めるにもみんなの意見を聴いたりと、何かにつけては気を配り、こまごまとした世話を焼いてくれます。

そして、このような行動のパターンは、その方の行動を全体として眺めると、あまり変化がありません。とくに寛いでいる場面では、そのパターンがよく表れます。ですから、そういった行動を見て、人は“A子らしいわね”とか、“B子はいつもそうなのよ”と表現するのです。

こういったパターンは、人が生れ落ちてから社会に適応しながら生きてくるプロセスで、徐々に身につけてきたものです。そして、それはその方が生きていく上で、一番楽なもの、上手くいくもの、自然にできて、かつ効果的、効率的なものなのです。

言ってみれば、これはコミュニケーションのクセのようなものです。ですから、それがどんなものであれ、いいわるいや優劣がつけられるものではありません。また、長い間かかって身につけたものですから、これを変えよう、今の自分とは全く違うパターンを身につけよう、全く違う言動をとる人にすっかりなりかわろうと思っても、あまり上手くいくものではありません。

このような考え方を知ることで見えてくるのは、“人から見た自分”ということです。つまり、社会の中で、私はどう見えているのか、どういう存在なのか、ということです。“私”というのは多様な存在で、心、内に秘めた思い、思考、外からは窺い知れない深層心理、性格、生きてきた歴史などさまざまなものを含みますが、ソーシャル・スタイルでは、まわりの人から見える、あなたの行動のパターンに着目します。

U.2つの切り口

§3.思考表現度とは

人の行動に着目する場合、2つのポイントを見ることが役に立ちます。それは、思考表現度感情表現度です。これは、1960年代にDr.David Merrillによって提唱されました。

思考表現度とは、まわりの方からみて、その方の考えや主張がどのくらい力強いか、またまわりの方がその方にどのくらい影響されるか、ということの度合いを意味します。

難しくきこえますか?これは、ご本人の内心の思いの強さはさておいて、それを表現したり行動に表す時、相手の方が、その方を、“まわりの人に影響を与えコントロールしようとする傾向が強いな”と感じれば思考表現度が高い、“弱いな”と感じれば、思考表現度が低い、ということなのです。

さきほどのA子さんとB子さんではどうでしょうか?二人とも、内心は同じくらい強く、“今日は、是非、一緒に飲みに行きたい”と思って電話をしていますが、一般に人はどちらの電話に強く影響される…、つまり、誘われているな、ということがわかりやすいでしょうか?

遠慮がちに予定をきいてくるB子さんより、単刀直入に用件を言うA子さんの方ですね。A子さんは思考表現度が高い、B子さんは低いわけです。

では次に、思考表現度の高い方、低い方は、それぞれどんな話し方をするでしょうか?その見分け方は、何がポイントになると思いますか?

A子さんのように単刀直入にものを言う方は、B子さんのように婉曲にものを言う方にくらべて、声は大きいでしょう。また、口調は明確で、語尾もはっきりと言い切り、断定的でしょう。“私は、〇〇のお店にいきたいの”“△△が食べたいわ""それは、いや”“××しましょう”という感じです。

一方、B子さんは、声はソフトで、口調も穏やか、語尾は誘うような感じや、相談するように問い掛けることが多いでしょう。

“〇〇のお店がいい、って聞いたのだけど、どうかしら?”“△△が有名らしくて、評判がいいみたいよ”“それは、どうかしら…。”“××する、というのはいかが?”という感じです。

§4.思考表現度の高い方の特徴

では、ここでは、さらに詳しく、その特徴をあげてみます。

これらは、あくまで、思考表現度の低い方に比べて、そういう傾向が見られる、ということです。すべての人に、あらゆる状況で、ここにあげた特徴が全部、そのまま当てはまるわけではありません。そして忘れてはならないのは、あなたがご自身でそう思うかどうかはちょっと置いておいて、まわりの方からあなたがどう見えるか、なのです。

§5.思考表現度の低い方の特徴

ここでも、同じように、具体的にあげてみます。

これも、あくまで、思考表現度の高い方に比べてそういう傾向が見られる、ということです。すべての人に、あらゆる状況で、ここにあげた特徴が全部、そのまま当てはまるわけではありません。

§6.感情表現度とは

次に、感情表現度をみてみましょう。

これはまわりの方からみて、その方が、どのくらい自分の感情を表しているか、または他の人の感情を理解しているとわかるか、ということの度合いを意味します。

これも、思考表現度と同じく、まわりからどう見えるかですので、たとえどれほど豊かな感情を内に秘めていても、それを外に出さなければ相手には伝わりませんから、感情表現度は低いということになります。

では、感情はどのようにして伝わるでしょうか?目に見えるものと、耳に聞こえるものに分けて考えてみましょう。

まず、目に見えるものとしては表情があります。豊かな表情は、感情を表す代表的なものですね。眉の動きだけを見ていても、喜怒哀楽がわかるような表情をする方がいらっしゃいます。こういう方は、そうでない方に比べて、表情筋が発達していますね。また、目は口ほどにものを言い、と昔から言われています。目で誘う、目で説得する、目で懇願する、目で殺す…、などといいますが、何も語らなくても顔を見ているだけで今の気分が直ぐにわかる方、これは感情表現度が高いのです。その逆が、ポーカーフェイスです。感情や気分の変化を顔に出さない、つまり感情表現度が低いわけです。また手の動き、立ち居振舞いにも感情は表れます。

では、耳に聞こえるものではどうでしょうか?感情たっぷりの話し方をする方、いらっしゃいますね。声の抑揚や強弱、高低は、感情を表します。また、言葉遣いではどうでしょう?

先ほどのA子さんの電話をみてみましょう。“ねぇ〜、今晩、軽く飲まない?青山に、すっごく素敵な大人のバーを見つけたのよ!あなたもぜったい、気に入ると思うわ!8時頃、どうかしら?私は、7時過ぎにはなんとか出られそうなの。是非、行きましょうよ、ね!”この中で、感情を表わす言葉は、“ねぇ〜” “すっごく” “ぜったい” “ね(最後の言葉)”などです。ポーカーフェイスで淡々とお話になる方は、こういった言葉遣いはあまりしませんね。

§7.感情表現度の高い方の特徴

では、先ほどと同じように、特徴をみてみましょう。

いかがでしょうか?イメージできますか?感情表現度の低い方と比べて、以上のような傾向が強いと、まわりの方から見られるのです。これも、行動のクセ、身につけたパターンであって、内心のありようとはまた別です。

§8.感情表現度の低い方の特徴

では、引き続きその特徴をみてみましょう。

これも、感情表現度の高い方と比べて、こういった傾向が強いように、まわりの方から見えるのです。この特徴だけ見ると、感情のない方のような印象を受けるかも知れませんが、とんでもない、篤い人情家もいますし、情熱的な方も多いのです。ただ、それを表に出さないのですね。

V.4つのスタイル

§9.人から見た私

§3から§8までで、人の行動に着目する場合の、2種類の軸を見てまいりました。皆さんはきっと、ご自身はどうだろうか、と当てはめながらここまで読み進まれたことと思います。

この2つは度合いですから、皆さんの言動は、測定するとすれば、それぞれの物差し上のある地点にあるということになります。人間ですから、場面によって異なる言動を取ることもあります。迷った時は、人から見て、どちらかと言えば〇〇と見られているだろうな、とお考え下さい。また、親しい方におききしてみるとより正確ですね。自分で考えるよりも、人から見た方が明確にパターンが見えるものです。実際、これを測定する場合には、まわりの方数名に質問紙をお配りして回答していただき、その結果を、今までのデータベースとつき合わせてコンピュータ処理をして算出します。測定なさってみたい方は、そのようなツールもありますから、お試しになってもいいですね。
(http://www.sophia-h-c.com/check/index.htmlでは、ごく簡単な自己チェックが無料でできます。)

さて、次に思考表現度感情表現度の2つの軸を縦横に交わらせて、4つのマトリックスをつくります。これが4つのソーシャル・スタイルなのです。そして、それぞれを次のような名前で呼びます。

§10から、4つのソーシャル・スタイルを順にご説明していきます。これは、“人から見た私”であること、どのスタイルがいいとかよくないという価値判断を含まないもの、という2点を忘れないで下さいね。どのタイプも素敵な特徴をもっていて、すべてが必要です。人が、誰一人としていらない方がいらっしゃらないように。

§10.アナリティカル/思考派の特徴

[低い 思考表現度×低い 感情表現度]

最初に、アナリティカル/思考派、つまり2つの軸がともに低いスタイルです。これは、Analytical、論理派、堅実派などとも呼ばれています。

この方々の特徴を見てみましょう。先にご案内した2つの軸の低い方の特徴を併せもっていますので、穏やかに意見や考えを述べ、感情を抑えて冷静に行動します。

こういう方、まわりにいらっしゃいませんか?主張、感情とも強く表現することがないので物静かな印象を受けることも多いですね。

緻密で、調査も怠らず、細かいこともあいまいにせず、きちんとフォローしてくれます。一緒に仕事を進めると、こちらが見落として点をきちんと見つけ出してくれたり、こちらの思い込みや勘違いなどを、丁寧に、論理的に、ゆっくりと忍耐強く説明してくれるので、“クールな仕事人!”と、密かに尊敬してしまいます。

忙しすぎたりストレスが溜まってくると、ときに細かなことに固執しすぎて前に進めなくなったり、決断ができなくてハングアップしてしまうこともあります。

セミナーでスタイルのお話をすると、“先生、アナリティカル/思考派って、石橋を叩いて渡る、っていう感じですね”というご意見が、よく出ます。“そうそう、行き過ぎると、石橋を叩いて、叩き壊すこともあるよな”などという会話が、年代、業種を問わず、あちらこちらできかれるのは、不思議です。

§11.ドライバー/行動派の特徴

[高い 思考表現度×低い 感情表現度]

次に、ドライバー/行動派です。アナリティカル/思考派と同様、感情は強く出さないのですが、主張は強くするスタイルです。これは、Driver、現実派などとも呼ばれています。

この方々の特徴は、行動を重視し、主張をはっきとするので、まわりの方を目的に向けて動かします。

“これって、〇〇さんだわ!”とクスッと小さく笑いながら、読んでいらっしゃる方もいるのではないでしょうか?キビキビと、リーダーシップを発揮して、決断を重ねながらものごとを進めていく姿に、“必殺仕事人!”という印象を持つ方もいらっしゃるようです。

話すのも、行動するのも速いペースで、また、トラブルや逆風の時ほど力が漲るようにも見え、頼もしさを感じます。

ただ、あまりにそのペースで推し進めすぎると、まわりにプレッシャーを感じさせてしまうことも。

ある世界企業では、このタイプばかりを採用し、過半数の社員がこのタイプ、という時期がありました。IT業界で、押しも押されぬ地位を確立するには、このタイプが有利と、お考えになったのでしょうか。その会社でこのお話をすると、皆、一様に、感じ入るのです、同じタイプの方ばかり集めた組織の弱さに、居心地の悪さに、生産性の低さに。ちなみにそこで3年勤めると永年勤続者、5年勤めると、“よくぞそこまで頑張った!”と尊敬されるのだそうです。

§12.エミアブル/協調派の特徴

[低い 思考表現度×高い 感情表現度]

さて、次はエミアブル/協調派を見てみましょう。アナリティカル/思考派、ドライバー/行動派と違い、感情を表現しますが、主張は控えめです。Amiable、友好派などとも呼ばれます。

この方々の特徴は、人間関係を大切にし、皆で協力してことを進めよう、とするところにあります。

いらっしゃいますね、こういう方。この方がいらっしゃると、和気あいあいとした雰囲気が醸し出されます。こまめに近況を伝える電話やメールをくれる、よく顔を見せ、手土産などもお持ち下さる、和むような話題を提供してくれるなど、気働きを行動に表します。

自分がこうしたい、ああしたい、より、“皆がいいと思うようにしよう!”と考えるタイプで、いつも穏やかな微笑みを絶やさない、なごみ系、癒し系です。セミナーでも、このタイプの方が、にこにこしながら頷いて下さると、とても話がしやすくなります。

“縁の下の力持ち” “正しい日本人”などともいわれるこのタイプですが、あまりに気を使いすぎると“優柔不断”ともなりかねません。また、皆をサポートしようとするあまり、意見の対立するAさん、Bさん、Cさんすべてに共感してしまい、“一体、君の意見は、何なんだ!”と、混乱を招くことも、ありがちです。

§13.エクスプレッシブ/感覚派の特徴

[高い 思考表現度×高い 感情表現度]

最後はエクスプレッシブ/感覚派です。主張も、感情も、ともにオープンにするのが、このエクスプレッシブ/感覚派です。Expressive、社交派などとも呼ばれます。

この方々の特徴は、チャレンジ精神旺盛で、意見も思いも感情も忌憚なく表す、歯に衣きせぬタイプです。ご本人は、そんなことはない、これで遠慮もある、と思っているようですが、スタイル論は、あくまで、他の方からどう見えるか…、ですから。

一人いらっしゃると、かぜん、にぎやかな雰囲気になるタイプです。夢中になると、本当に熱中しますが、飽きてしまうと、あっさり忘れてしまう傾向もあります。“親分肌”“姉御肌”と言われるように面倒見がよく、皆を巻き込んで夢中にさせ、難しいハードルほど嬉々として越えようとし、ときに信じられないような結果を達成します。が、衝動的な言動で、まわりを驚かせることも。

よく言えば細部にこだわらないのですが、細かいところを見落としてしまったり、事実関係、情報をちゃんと調査しないで、直観で進めてしまい、あとから、“こんなはずではなかったのだが…。”となる場合もなきにしもあらず。低迷する時代に、夢やビジョンを示し先導する“カリスマ性”も、このタイプの特徴です。

§14.自分が知っている私、人から見た私

さて、各スタイルの特徴、大まかな印象を掴んでいただけたところだと思います。そして、私は、このスタイルかしら、と思い始めていらっしゃる方も多いことでしょう。

人は誰でも、さまざまな要素をもっていますから、どのタイプの特徴の中にも、“これは、当てはまる”と思う記述があって、自分のスタイルを決めかねていらっしゃる方もいるはずです。そういう場合は、その中でも、より多く人に見せている姿を思い浮かべ、当てはまる記述の多いスタイル2つを、ご自身のスタイルと思って読み進めて下さい。調査用紙で測定する場合にも、結果は、その方のメインのスタイルに、もう一つ、サブのスタイルがつきます。ですから、4つのメイン・スタイルに、さらに4つのサブ・スタイルがついて、全部で16種類のスタイルとなります。

メインとサブが同じスタイルの場合は、むしろ少数派です。これをなかば冗談に、“生粋のエクスプレッシブ/感覚派”などと呼んで、そういう方に、ご自身の普段の行動パターンをお話ししていただくと、まさにソーシャル・スタイルが示す通りで、驚きます。ある時、生粋のエクスプレッシブ/感覚派の方に、“衝動的だとか、衝動買いをする、などと言われていますが、ご本人としては、どう感じますか?”と質問したことがあります。すると、こんな風に答えて下さいました。“たしかに、人から見たら衝動的に見えるでしょう。買い物でも、高いものほど、パッと買いますね。でも、それで後悔することは、あまりないのです。たまに、アナリティカル/思考派の家内に、すこし考えてから買ってね、と言われて、考えてから買うと、逆に失敗します。だから、自分では、衝動的といわれても、変えるつもりはないのです。”

これが、まさにスタイルなのだ!、と感じました。つまり、人から見れば、望ましい行動とは思えない“衝動買い”も、ご本人にしてみれば、今までの人生の中で最もうまく、効率よく、買い物ができたやり方なのですね。そういったさまざまなやり方の集大成が、ソーシャル・スタイルなのです。ですから、どのスタイルが望ましい、とか望ましくない、ということ自体、意味がないのですね。そのかたの、ものごとをこなしていくやり方の、コンフォート・ゾーン、もっとも快適なありようの集大成なのです。

W.あなたを活かす

§15.ソーシャル・スタイルの活かし方

ソーシャル・スタイル、とくにメインのスタイルは、幼い頃に形成され、一度かたまると、まず、一生変わらないものですし、また自分で変えようと思って変えられるものではありません。ときどきで、その場に合った、相手に合わせた言動をとることは、望ましいことですし、また、あとのセクションでも扱いますが、スタイル自体は、よほどの環境の変化、大きなショックがない限り、だいたい、一生一定です。私自身、人生のさまざまな変化の後に調査をしていますが、今までメイン、サブとも変化したことはありません。その度に、この理論の妥当性や、普遍性を思います。もともとこれは二つの世界大戦の間に、ミネソタ大学を中心に研究が進められていたものをその前身としています。人類の歴史は、戦争と疫病の歴史だ、という表現がありますが、よしあしはともかく、軍の研究したものは、精度と確度がかなり高いのは事実です。

このように、ソーシャル・スタイルは、思いのほかその方を特徴づけるものですが、これは、その方の性格のほんの一部、それも、あくまで言動という表面的な部分にすぎません。ただ、人と接するときには、一番最初に相手に知覚され、第一印象の形成などにも大きく影響します。人生には、いろいろなフェイズの人間関係があり、親子や、パートナー、ともに生活をしていく方など、ソーシャル・スタイルを越えて、もっと深いところの理解が必要な場合もあります。しかし、仕事や、コミュニティー、学校の関係など、目的に向かって、たくさんの方と、ともに協力していく場合には、お互いのスタイルを認識し、さまざまなやり方があることを、いいわるい、好き嫌いではなく、その方の独自性として尊重できるようになると、とても自然に違いを認め合うことができ、苦手意識もなくなり、お互いの強みを活かし、弱みを補い合うようなコラボレーションができるようになるのではないでしょうか?

すべての方が、今あるままで、完全な存在なのだと思います。いらないものは、何もないのです。

以下のセクションでは、各スタイルの強みと弱み、その活かし方について、見ていくことにしましょう。

§16.アナリティカル/思考派のあなたの強みと弱み

新しいプロジェクトが始まる、プレゼンテーションが予定される、あるいは、プライベートで初めてゴルフに挑戦する、ちょっと大きなお買い物をする、などという時、あなたはまず、どうしますか?

WEBでサーチしたり、文献を読んだり、パンフレットを収集したり、必要な情報やデータを集めることからまず始めるのではないでしょうか?お一人で納得するまで調べ、考え、もれがないか細部まで注意を向けますね。もちろん、あなたが、“これで完全だ”ということはまずないのですが、行動に移したり決定しなければならない期限がくるまでの時間をたっぷりと使い、可能な範囲で情報を集め、考えられるリスクを最小限に抑える方法を画策し、忍耐強く、綿密に準備をすることでしょう。また、矛盾する点やあいまいな点は徹底的に調査するなど、いい意味で批判的な態度で臨み、鵜呑みにしません。

また、新しく人に出会う時も、用心深く、十分な注意を払いつつ徐々に親しくなっていき、安心してお付き合いできる方とわかってきてからは、強い繋がりを保ちますね。

セミナーでは、同じスタイルの方を集めて、ディスカッションして発表したり、マーカーでTシャツの絵を描いてもらうことがあります。そうすると、もっとも時間をかけて、準備をして下さるのが、この方々です。

発表は、順序だてて丁寧になさいますし、Tシャツは、ブルーや黒などクールな色使いが多く、縞模様などがよく描かれますが、縞の太さや間隔が、定規をあてたように正確です。また、Tシャツの襟口に、わざわざタグを描き入れ、“Cotton100% Made in U.S.A”というコワザを見せてくれることも。

以上のようなことは、他のスタイルの方々には、なかなかできないことです。あなたがそのように行動することで、ものごとは、思惑ではなく、手順を追って、客観的な合理性や整合性をもって進むことができます。また、後から、“こんなはずではなかった!”ということになる可能性を、事前に防いでくれるのです。あなたは、そのようにして、完璧をめざし、成功する確率を高める、プロフェッショナルです。

このような強みは、しかし、すぐに行動し結果を求めるドライバー/行動派には、理解されにくい場合があります。結果はそっちのけで、システム作りそのものや、秩序正しく高品質なプロセスの構築にかまけている、という誤解を招くこともあるようです。

また、人間関係の中でものごとを進めていくことを好むエミアブル/協調派や、エクスプレッシブ/感覚派には、軽いおしゃべりや、仕事以外の飲みなどにあまり加わらない、付き合いのわるいヤツという印象を与えることもあるかもしれません。たまに一緒に飲んでも、感情をあまり表さないので、楽しいのだかつまらないのだかわかりにくいし、そのくせ、突然、小難しい顔(と、エミアブル/協調派やエクスプレッシブ/感覚派には映る顔)をしたまま、いつから準備していたのだろう、と思われるような秩序だったギャグを淡々と言った日には、固まってしまうエクスプレッシブ/感覚派もいることでしょう。 こんな調査がありました。コンピュータ業界全体では、各スタイルがだいたい25%ずつに分かれるのですが、システム・エンジニアに限って見ると、その時の結果ではアナリティカル/思考派が35%と、有意に多いのです。そして、彼らは、自分で納得のいくクオリティーの仕事を納めようとする傾向が大変強く、納期の延長を依頼することがままあり、ともかく納期の死守を主張するドライバー/行動派の発注者と、トラブルになることがしばしば見られます。

4つのスタイルは、ハイパーストレス状態になって、いつものやり方では持ちこたえられなくなる、つまりキレると、やはり4つの様相を呈します。アナリティカル/思考派は、“回避的”つまり「問題を避ける」ようになります。貝のように黙ってしまう、身を引いてしまう、そこからいなくなってしまう、そして、そのあとは、あたかも何事もなかったかのように振舞う、という行動が見られます。ストレスが高まると、2つの軸がともに低いアナリティカル/思考派は、さらにその度合いを強め、主張も感情も抑制するのです。口数は、いつにもまして少なくなり、話すとしても、事実的、論理的側面に偏り、理屈っぽく機械的な様相を呈します。

そんな自分に気づいたら、自分を労わることを忘れないで下さい。労わり方のコツは、第3章をご覧下さいね。

§17.ドライバー/行動派のあなたの強みと弱み

アナリティカル/思考派が考える人であるのと大きく異なり、ドライバー/行動派のあなたは、結果を出す、それも、なるべく短時間に完了させる、そのためにまず行動する人です。決断し、目的、目標に向かって行動します。

独立心が旺盛で、自分自身で高いハードルを設定し、遠くにあって見えにくいものではなく、近くにあって明確なゴールに向かって、邁進します。決断も、アナリティカル/思考派のように入念に調査をし、十分な確証を得てからするのではなく、自分に必要な情報が、プラス、マイナスともに2,3点集まれば、即座に決定します。決定したなら、リスクを恐れず、どんどん進めていきます。早ければ早いほど能力がある、という考え方をするタイプでもあります。また、必要があれば、変更をすることも辞さない傾向があります。

何はさておき仕事第一、人に命じられるのでなく、自分で決定することに強みがあります。時間の浪費を嫌い、使い方に無駄がありません。当然、時間を守りますし、まわりにも期待します。

まわりの方には、能力を要求し、忌憚ない、ストレートな物言いをします。競争相手が現れたり、逆境にあっても、弱気にならず、むしろ、受けて立つ気概があります。まわりに指示を出し、コントロールしながら、勝つためにエネルギーを注ぎます。まわりを説得するのも、得意です。

このタイプばかり集めてグループ・ワークをしていただくと、まず役割がさっと決まり、必要なことを効率よく片付けてゆきます。アイスブレークなどの前置きなしに直ぐに作業に入り、笑い声が立つことも少なく、4つのタイプの中で一番に仕上げてしまい、自主的に休み時間に入ってしまうことも。仕事の速さは、類を見ません。

描くTシャツは、黒またはブルーの一色使い、いたってシンプルで力強く、柄がつくことは、あまりありません。白い無地のTシャツというわけです。時に、スローガンのようなものがかかれます。一度、“ほっといてくれ” と書かれたTシャツを見た時には、思わず笑ってしまいました。

このように稀有な強みのあるドライバー/行動派です。目的と期限を伝えて、あとは任せておけば、細かな指示も不要ですし、期限もきっちり守ってくれるでしょう。また、費用対効果も勘案し、大変な状況にあっても、自分で自分を励まし、エネルギッシュに前進していきます。どんな場面であっても、あなたが仕事を引っ張っていくことでしょう。

でも、あまり行き過ぎるとどうでしょうか?気づかないうちに、まわりにプレッシャーをかけ過ぎたり、強引な印象を与えてはいないでしょうか?ドライバー/行動派がエネルギー全開で突き進む時は、主張をする度合いの低いアナリティカル/思考派、エミアブル/協調派の方々は、意見があっても、言い出しにくい雰囲気です。

部下指導のロールプレーをした時です。エミアブル/協調派の部下が、ドライバー/行動派の上司に、報告、連絡、相談をする、という設定でした。10分ほどのロールプレーが終わって、まず上司本人に、今のロールプレーの振り返りとして、上手くいった点を発言してもらいました。すると、ご本人がおっしゃるには、“相手がエミアブル/協調派なので、あまりこちらが一方的に指示を出したり、強く意見を言わなかった”そうです。それでは、ということで、部下役のエミアブル/協調派の方にご感想をおききすると、“上司の目がきびしく感じられて、言いたいことが半分も言えなかった”というのですね。なるほど、目は口ほどにものを言います。言葉にだけ気をつけても、ドライバー/行動派のきっちりと相手の目をみつめる視線は、それだけで雄弁、時に威圧感を与えるのですね。

社会人として経験を重ね、相手に合わせることが自然に身についてくると、自分が心地よい行動パターンから離れて、一時的に相手の行動パターンに合わせることを、多かれ少なかれ、誰でもなさいますね。これが上手な方は、拝見していてどのスタイルかわかりにくいのですが、私がドライバー/行動派を見分ける時には、視線に注目します。いつも事実を見つめる透徹した視線、強い意志を感じさせる視線、まっすぐにこちらを見つめる視線は、このタイプの特徴です。

聞く耳をもたず、人にきびしく、相手の発言を抑えてしまう、また感情を表さないので親しみにくく、相手の感情にも無頓着だと映りはじめると、あなたがいくらエネルギーを注いでも、チームとしての生産性があがらない、ということにもなりかねません。

ストレスがたまると、ますます感情を抑え、主張が強くなるので、“独善的”「より主張を通そうとする」つまり、自分の言いなりにさせよう、という状態になります。思い当たるふしがありますか?

§18.エミアブル/協調派のあなたの強みと弱み

アナリティカル/思考派、ドライバー/行動派が、仕事を第一に考えるのに対して、人間関係、信頼関係をまず第一に考えるのがエミアブル/協調派です。仕事の場面でも、人間関係にそこはかとない緊張感があると落ち着かず、まず、いい関係を築いてから仕事をしていかないことには、と考えて行動します。人は、いい関係でいれば、いい仕事ができる、という信念があります。

いきなり本題に入る前に、絶妙なアイスブレークとなるあたりさわりのない世間話を提供し、いつも微笑を絶やさず、皆に気を配り、アフターファイブも付き合いのいいあなたに、どれほどの方の緊張が和み、助けられていることでしょう。

一人ではなく、チームとして動くことに強みがあります。自分の意見をおし通そうとするのではなく、聴き上手で共感的、チームの皆の意見を尊重し、縁の下の力持ちとなることをいとわず、忍耐強く、世話好きです。派閥の調整なども、このタイプの得意とするところですね。

評判が気にかかるので、いろいろな方の意見をきいたり、ユーザーズリストなどを調べるなどしてリスクを避けようとします。

セミナーでは、このスタイルを同じグループにすると、いい感じに和んで、ソフトな笑いが絶えず、穏やかに進んでいきます。絵を描いていただくと、人が手を繋ぎあっているモチーフや、オリンピックの五輪マークなどがよく出てきます。色使いは、とてもカラフルで、線や輪郭は鋭角的ではなく、まるっとした感じです。

さて、このグループのTシャツに、50%以上の確率で登場するマークがあるのですが、何だと思いますか?それは、Love & Peace、あの黄色いスマイル・マークです。これが、業種、お仕事、年齢、性別を問わず、あまりに頻繁にでてくるのには、驚かされます。まさにこのスタイルをよく表しているのでしょうね。

講演をすると、このスタイルの方が、かならず微笑みながら頷いて下さるので、救われます。また、マメな時候のご挨拶を下さり、訪問時には手土産などの心遣いを忘れず、お礼状などもきちんと書いて下さるのは、4つのスタイル中、一番です。落ち着いたペースと、適度な感情表現が、友好的な雰囲気を醸し出し、人を信用しサポートする手間を惜しみません。

しかし、まわりに気を使うあまりに、Noといえず、あちらにもこちらにもいい顔を見せて収集がつかなくなったり、一人で過剰な仕事を抱え込み、泣きたい気持ちになったことはありませんか?

なかなか決断できない態度は、ドライバー/行動派やエクスプレッシブ/感覚派からは、優柔不断と見られがちです。また、人間関係作りに時間とエネルギーをかけすぎて、仕事が二の次になってしまうことは、ありませんか?プレッシャーに弱い、人を信用しやすい反面騙されやすい、事実をあまり重視せず自分の感情や人の意見に影響されて決断をしてしまう、なども弱点ですね。また、意見や主張をする度合いが低いので、何かフラストレーションがたまるようことに出会ってもぐっと飲み込みますが、感情表現は豊かなので、あとあとそれを引きずる、俗にいう、“根に持つ”のもこのスタイルに、多く見られます。

以前に企業研修の場面で、エミアブル/協調派のインストラクターが、何かの説明をしていて、ちょっと曖昧な表現をしたのですね。すると、参加者から、“先生、それは〇〇ということですか?”というご意見がでました。インストラクターは、“ああ、説明が不明確で申し訳ありません。おっしゃるとおりです。”すると、別の方から、“先生、それは、〇〇ではなく、△△ではないでしょうか?”するとインストラクターは、”えっ、あ、そうですよねぇ、はい。いいご指摘をありがとうございまいした”すると、また他の方が“やっぱり〇〇だと思うのですが…。”インストラクター、“あ、そう、そうですよね。”この後、全員から、“先生、一体どっちなんです!”と詰め寄られ立ち往生なさっていました。これは、エミアブル/協調派がストレスでいっぱいの時に見せる状態で、“黙従的”「顔で笑って心で泣いて、黙って従う」です。

ドライバー/行動派のように、目立つ言動ではないので、まわりもご自身も見落としがちですが、早めに気づいて、自己管理を忘れないように気をつけて下さい。

§19.エクスプレッシブ/感覚派のあなたの強みと弱み

エクスプレッシブ/感覚派は、4スタイル中、もっともドラマティックで、人目をひきます。明るい色彩、大胆な発言や話題性のあるトピックス、疲れを知らぬパワー、持ち前の社交性を発揮して自分から進んで築いていく人間関係、活気がありチャレンジ精神旺盛です。

仕事の前に、楽しい話題で盛り上がり、まわりの方々を居心地のよい雰囲気につつむことを忘れません。好きなことには熱中し、仕事といえどもワクワク楽しみながら進めていき、結果を出します。まわりの方に、生き生きと夢やヴィジョンを語り、その気にさせ、楽しみながら巻き込んでいってしまう、ちょっとカリスマ的な力があります。誰にも越えられないようなハードルに挑戦し、あっという間にクリアしてまわりを驚かす、そんな仕事ぶりが、好みです。

同じ人間志向でも、エミアブル/協調派が聴き上手だったのに比べて、エクスプレッシブ/感覚派のあなたは自分がインパクトを与えたい方なので、相手には話を聴いてもらうことを好みます。豊富なボキャブラリーを駆使し、大きく抑揚のある声で話し、興に乗ると速いペースになってきます。しゃべりながら考える、しゃべることで考えをまとめることもあるようです。

仕事や役割を達成しようという気持ちは強く、競争心も強いほうで、一度決めたらリスクを気にせず、細部にこだわらず、まわりを巻き込みながら、エネルギッシュに達成していきます。が、基本的には、人生は仕事のためではなく、楽しむためにある、と考えています。目新しいもの、ホットな話題、目立つこと、話題の中心になることが好きで、一見華やかなように見えますが、実は、まわりの方の思惑、感情に意外と敏感で、影響を受けやすく、自分自身も感情的にアップダウンがあります。

イマジネーションが豊かで、クリエイティブ、直感的とも思える方法でものごとを決定することに強みがあり、まわりを動機づけ、敏速に行動し、達成した結果を褒めてもらうと、疲れも忘れてまたはりきってしまいます。

グループワークでは、会話の量、笑い声とももっとも多く、そのこと自体を楽しみながら作業をするので、休憩時間になっても、まだ和気あいあいとやっています。そのなかでユニークな、ちょっとした仕掛けをしておくことも忘れません。Tシャツの絵では、あるだけのマーカーを使い、さらに手持ちのカラーペンまで動員して、大きな太陽や、ひまわり、蝶、海、ヨット、オートバイ、米国旗、祭半纏などのモチーフを、用紙いっぱいに大きく、力強く、ラフに描いて下さいます。絵柄は、意味というより、イメージ、ノリで決まるようですね。また、Tシャツを模造紙に描くだけではあき足らず、どこからか鋏を探してきて、模造紙をTシャツの形に切ったり、袖をつけたり、さらに、Tシャツの後ろまでデザインするなど、楽しみながら結果を出すようすが見られます。

このスタイルが一人いらっしゃると、全体の雰囲気が活気づき、まわりの方のエネルギーレベルがあがるほど大きな力をお持ちですが、反面、夢やヴィジョンを語ることに熱中しすぎて、現実検討が手薄になり、そのままつき進んだあげくに、砂上に楼閣を築いてしまうことはありませんか?

計画的、とはいいがたいので、時間や、スケジュールの管理は大丈夫でしょうか?

直感的でエネルギッシュ、速いペースの仕事ぶりは、他のスタイルからは、ときに衝動的に見え、不安にさせることもあるかもしれません。熱が醒めるのも、あっという間ですし。

聴くことより話すことが好きで得意なあなたは、他の方の話を中断したり、話題を独占してしまう、と他の方から見えることもあるようです。また、興の趣くままに話題が展開していくので、論理的にものを考えようとする方には、ついてこられない場面もあり、それが全体としての生産性を下げてしまうことも。また、昨日の気分と今日の気分で、意見や決定が異なることがないようにしたいものです。

ストレスがかかってくると、主張も感情もより表出するので、“攻撃的”で「相手を責める」ような言動が見られます。相手を言葉で非難、攻撃したり、書類を叩きつけたり、おもわず立ち上がって激高したり、という経験はありませんか?

そんな時は、相手を責めるより、ご自身のケアーにエネルギーを向けて下さいね。

§20.スタイルの活かし方

どのスタイルにも、異なる強みと弱みがあり、だからこそ誰もが必要でかけがえがない存在なのだということが、おわかりいただけたのではないかと思います。4つのスタイルは、それぞれが25パーセントづつになるように物差しを調整しています。そして、どのスタイルも、どんなお仕事、どんな環境でも成功することがわかっています。ただ、成功への道が、4種類ある、ということです。

あるスタイルだけでチームを組むと、テーマが明確で短期(2,3ヶ月)の場合に限り、成功に繋がることがあります。しかし、一般的には、同じ強みがぶつかったり、困難なことが起こった時に、同じ弱みが災いして乗り越えられないなど、同質集団の弱さが出てきてしまいます。同じスタイルは、理解しやすい反面、同類嫌悪を感じる方もいます。チームとしては、各スタイルがそろっていて、しかも、スタイルの強みを活かせるような役割分担ができることが望ましいのです。

カップルを観察すると、お付き合いしているカップルでは同じスタイル同士という組み合わせも少なくありませんが、夫婦となると、これが意外に正反対のスタイル同士が多いのです。ここで正反対というのは、思考表現度、感情表現度、2つの軸がともに反対のことをさします。つまり、エクスプレッシブ/感覚派の奥様にアナリティカル/思考派のご主人、ドライバー/行動派のご主人にエミアブル/協調派の奥様、という組み合わせです。一般的にはもっとも理解しにくいスタイル同士なのですね。ところが、夫婦には、これが多いのです。セミナー後の懇親会で、参加者の方からご家族のお話がよく出るのですが、夫婦喧嘩も、ご主人様、奥様のストレスが高くなった時のスタイル(バックアップ・スタイル)通りで、感心することしきりです。

話がそれましたが、そう、なぜ、夫婦には、反対のスタイル同士が多いのか、ですが、これにはどうも人の叡智を感じてしまいます。夫婦のように、最も長い時間をともに過ごし、子供を育てたり、家庭を築いたりと、タフでハードな課題を克服していくことが予想される状況では、日常の快適さよりも、自分の弱みをフォローしてくれる、自分にはない強みを持っているパートナーを無意識で選ぶのではないか、と思うのです。皆さんの場合は、いかがですか?

§21.あなたの活かし方

さて、自分を成長させたい、と願う場合、かつては、弱点、短所を強化することが望まれた時代もありますが、弱点を強化しようとしても、相当なエネルギーと時間がかかる割には成果が少ないことが観察されています。

その反省もあってか、最近では、個性を伸ばそう、ということが学校教育でも標榜されていますが、実現できているところは、そう多くはないのが現状です。

まじめな方ほど、努力に努力を重ね、自分のお尻をたたき、まだまだダメだと自分を責め、自分のコントロールの及ばないことまで自分に責任を感じて苦しんでいらっしゃるのを見ることが多い日常です。

今まで長きにわたって機能してきた社会のシステムが疲弊し、崩壊がすすみ、これから新しい秩序を作っていかなければならないという、拠りどころの何もない、不安で混沌としたこの時期に、自分が自分の味方でなくて、どうして前に進んでいかれるでしょうか?自分で自分を受容しないで、一体誰が“今のままでいいのだよ”と励ましてくれるのでしょう。

とはいえ、自分を認めて、受け入れ、褒めてあげる、というカルチャーのない中で育ってきた私達が、急に自分を受容しようとしても、とまどうばかりで、どうしていいものか、途方に暮れてしまいます。セミナーや講演の機会に、参加者の素晴らしい点を、具体的に指摘して褒めて差し上げると、“会社に入って以来、初めて褒めてもらいました!”と、本当に顔を輝かせて喜び、自信をとりもどす姿を見るにつけ、自分を受容しないでむしろ否定することを教える伝統が、どれほど、人を生きにくくしているのか、怒りを感じます。

その伝統を変えていこうとする時、気づくのは、学校の先生も、会社の上司も、子供をもつ親も、みな同じく、自分を受容してはいけない、もっともっと努力して頑張らなければいけない、という伝統の中で育ってきた、ということです。つまり、今のままでいい、と受容するそのやり方を、知らないわけです。やり方を知らなければ、効果的にできるはずはありません。知らないことは、教えてもらう必要があります。私は、この本で、そのやり方を、お伝えしようと思います。それは、私が生まれつきできていたことでは、全くありません。私自身、かつての伝統の中で、ひどく頑張って生きてきたのですが、その割には、幸せになれない状態を体験してきました。その過程で、さまざまな立場のたくさんの方々から、“違うやり方”を教えていただきました。この本は、その中で、私がやってみてよかったこと、まだすっかりできているとはいえないけれども、きっと誰かの役に立つと思えること、誰でもやってみればできそうなこと、を書いたものです。

大切なのは、自分を責めることでも、お尻を叩くことでもなくて、“自分を知ること”です。書店にならぶたくさんの本には、“自分を愛することが一番大切”と書いてあって、本当にそうだ、と思うのですが、私には、“自分を愛する”ということが、まだよくわからず、できないでいます。そのような本がたくさん出ている割には、それを読んで自分を愛することができるようになった、という人が、私のまわりには、いらっしゃいません。

私にできることは、“自分を知ること”でした。そして、これなら、誰にでも役立てることができるのではないか、と思うのです。

第1章では、自分を知る方法(ソーシャル・スタイル)をご紹介しました。続く第2章では、日常、途切れることなく続く他の方々とのやりとりのなかで、自分を殺すのではなく、相手を否定するのでもない、クリエイティブなコミュニケーションについて、考えます。そして、第3章では、やがて始まる新しい時代を担っていく方になっていただくためのヒントをご案内したいと思います。

ソーシャル・スタイルは、“社会の中での自分を知る”ツールです。自分の強みを具体的、客観的に知り、それを認めて、受け入れ、褒めて下さい。自分を励まして下さい。自信は外から与えられるものではなく、内面に備わっているものです。今のままの自分を認めることで、それを引き出して下さい。自分を認めたからといって、何も悪いこと、不都合なことは起こりません。それは、今までセミナーや講演でお目にかかった、たくさんの参加者が教えてくれました。

§22.人との違いを知ることで見えてくるもの

さて、今までのところで、人には、それぞれ異なる行動パターン、コンフォート・ゾーンがあることを知りました。人は、自分にとって一番居心地のいい、効率のいい行動パターンを自分のスタイルとして身につけているのでしたね。その行動パターンのなかでは、自分の強みが発揮しやすく、貢献することが容易にでき、しかも生き生きとできるのです。

反対にいえば、人は、自分と違う行動パターンの方に対しては、時に違和感や抵抗感をもち、近づきたくない、好きになれない、という印象を持ってしまうことも、多いわけです。皆さんも、今までなんとなく反りの合わない方、虫の好かないヤツ、できればご一緒したくない雰囲気の方って、いましたよね。今にして思えば、自分とはちがうスタイルの方だったのだなぁ、という洞察をお持ちになった方もいらっしゃることと思います。

そういうことに気づいた皆さんは、これから先、まわりの方とお付き合いしていく時に、好き嫌い、反りが合う合わない、虫が好く好かないという主観的な判断をする前に、その方の言動をそのまま受け止め、“ああ、このやり方が、この方には快適で安心できる方法なのだなぁ”と、いい意味でほっておくこと、気にしないことができるようになります。

けれども、このご本をお読みになっていない多くの方々は、自分と異なるスタイルには、あいかわらず違和感や抵抗感をもち、そこで理解する気持ちをシャットアウトしてしまうこともあり、そうであれば、皆さんの強みを理解するまでに至らないことも、多いのです。

とすれば、皆さんとしては、自分のスタイルが、他のスタイルからどう見えるのかを、きちんと認識し、その上で、誤解されることなく強みを活かしていくには、どんな工夫をしたらいいかを考える必要があります。

そのためには、相手のスタイルを知って、そのスタイルが大切にすることを理解し、それに対する配慮をするとよいですね。その具体的な方法を、次に見てまいりましょう。

§23.ストレスなく相手と合わせるコツ

相手に合わせる、というと、自分を殺して、我慢して、無理をして、あるいは、相手の心の中を慮って、気を使って、という印象がありますね。でも、もうそれは、やめましょう。ここでは、もう少し、プラクティカルで、効果的な方法を考えます。

といっても、ソーシャル・スタイルを学んだ皆さんなら、もう、今までのところで、十分理解してしまっているかもしれません。

つまり、相手の方と接する時、その短い間だけ、自分の言動を相手のスタイルに、ちょっと近づける工夫をしてみるのです。

たとえば、今まではいつも同じ自分のペースだった話し方を、相手のスタイルを考えたペースにしてみるだけでも、相手の方は、今までのあなたに対する見方とは、違う見方をするようになるかもしれません。あるいは、同じ話でも、相手に合わせてその中に数字を入れたらいいのか、それとも楽しいエピソードを入れたらいいのか、などを工夫することは、そんなに難しいことではありませんが、効果は大きいでしょう。また、結果を重視する相手には結果を先に伝え、プロセスや論理を重視する相手にはその部分を丁寧に説明する、なども、あなたに対する相手の方の認識を変えるものとなるでしょう。

さて、これを実践するための、2つのヒントをお教えしましょう。

一つ目は、§3〜§8で学んだ思考表現度感情表現度の二つの軸を思い出し、自分のいる場所と相手のいる場所が違う軸はどこかを見極め、その部分を相手に合わせるのです。

たとえば、思考表現度が高い方が、低い方に合わせる場合は、§5にある“低い方の特徴”をそなえた言動をとってみるのです。いつも、一番に口を開いているなら、他の人が一通り発言し終わるのを待って、ゆっくりと、問い掛けるように、ソフトな口調で話してみます。逆の場合も同じです。いつもはなかなか口を開かず、名指しされてやっと話す時も、遠慮がちに小さな声で、語尾を曖昧になさる方は、たとえ考えが纏まらなくても、思い切って誰よりも早く、とりあえず何か言ってみる、自信がなかろうと、短めの文章で、端的に言い切ってみる、声をくぐもらせず、大きく口を開けて滑舌を意識して、明瞭に声を前に出してみる、などです。

また、感情表現度も同様です。感情をよく表現する方が、そうではない方に合わせる時は、声の調子や、表情、手の動き、感情を表す言葉などを押さえ気味にして、仕事に特化した話の進め方を意識して下さい。憶測や、直観、人の意見を援用した話は避け、新聞記事や、統計数字、情報、データなど客観的な事実を織り込んで下さい。逆の場合も同じです。仕事の前の世間話は、無駄話ではなく、仕事の潤滑油と心得て、しばらく付き合ってみる、データばかりではなく人の意見や自分の主観も話してみる、微笑みを浮かべる、あまり固い雰囲気ではなく、ざっくばらんな態度を心がけてみる、などです。

両方の軸とも違う、正反対の相手の場合は、2つの軸ともに気をつけて下さい。

二つ目のヒントは、各スタイルの強み(§16〜19)にある、そのスタイルが重要視するものを把握し、そこを尊重するような言動をとる、ということです。時間の使い方が計画的な方に対しては、待ち合わせには早めにゆく、可能な面会時間を確認し必ずそれより短めに終える、などです。

世間話から夢やビジョンを語ることがお得意の方には、それにお付き合いすることがまず大切ですが、そればかりに時間をとられて、本題が十分に話し合えない可能性も考え、後からでもお返事をいただけるような書類を用意することも、大切です。

このような合わせ方ですと、目に見えない相手の心理を読んだり、自分を殺すようなことにはなりませんので、ストレスなく実行することができ、また効果も期待できます。

ポイントは、合わせるのは、その方と接する間だけです。ミーティングの時間、一緒に過ごす時間だけです。これを常時やっていようと思うと、それこそ、ストレスが生じ、いい結果になりません。北陸のIT関連の企業に、セミナー・インストラクターとしてお邪魔した時、研修担当の方から、参加者の25人中22人がアナリティカル/思考派なので、アナリティカル/思考派になりきってやって下さい、と依頼されたことがありますが、朝から夜まで首尾よくなりきることができたのは、二日目まで。普通は数時間、と思って下さい。