あなたの人生を輝かせるコミュニケーションの力
話すということ

5.話し方

十分気を配って準備をしても、実際にお話しする時に、どんな話し方をするかで、印象は全く異なってしまいます。メラビアンの法則によれば、準備した資料(言葉)は7%、話し方(声の調子)は38%でしたね。

なにもプロのように話す必要はありません。流暢に話すこともなければ、日常とは異なるパフォーマンスも必要ありません。ただ、ここでは、きき手がいることを忘れず、きき手に影響を与えるのが自分の役割だという意識をもっていただきたいと思います。常々日本人はプレゼンテーションが上手ではない、と言われます。その原因を私なりに考えると、なるべく正確に話そう、もれがあったり間違えてはいけないという気持ちが強すぎて、きき手と関係をもとう、双方向で作り上げていこう、というプレゼンテーションならではの意味をあまり重要視していないケースが多いように思えます。

正確さを期するなら、すべてをドキュメントにして送付すればすむことです。それをなぜ、わざわざ時間をとってプレゼンテーションするのでしょうか?それは、人の認識や行動に変化を起こさせるのは、資料ではなく、人の働きかけであるからではないでしょうか?

普段、対面でお話していると魅力的な方でも、プレゼンテーションとなると急に堅苦しくなり、むつかしい言葉を使い出し、声が強張り、自然な表情も消え、その方らしさがなくなって精彩を欠くのをたくさん見てきました。

誰でも人前で話すには、正確でありたい、自分の主張に賛同してほしい、きき手に気に入られたい、いい気分でやり遂げたいと思うものです。でも、その気持ちが強すぎると、緊張感が高まってしまい、きき手との関係を築きにくくなり、結局はいい結果にならないものです。

そういったことを踏まえた上で、話し方についていくつかのポイントをあげてみましょう。

話し方のポイントとしては、まず、声の調子があります。声の大きさ、抑揚、トーン、速さ、間、発声、滑舌、語尾の明瞭さなどです。大きさや抑揚、トーンは、メリハリをつけるのに役立ちます。抑揚は、ソーシャル・スタイルと関係が深く、もともと抑揚の少ない話し方をする方が、プレゼンテーションの時だけ無理に抑揚をつけようとして意識をしすぎると、本人にとっても周りにとっても悲劇です。むしろ、話の初めやポイントになるところで、声の大きさとトーンを上げる工夫をしてみて下さい。

プレゼンテーションの時は、通常よりゆっくり話すとききやすいものですが、実際は、緊張から早口になりがちですね。それが気になる方は、気づいた時に二呼吸くらいゆっくりと間をとることを心がけると、その間にきき手の理解が追いついて、それまでの早口が帳消しにされます。

発声、滑舌では、朝一番にプレゼンテーションがある日は、その前に一度は口をはっきり開けて、大きな声を出してから臨んで下さい。

語尾の明瞭さでは、日頃、語尾がはっきりとしている方は、問い掛ける時にはむしろソフトにする工夫をすると、きき手が落ち着いて考えることができます。反対に、日頃、語尾がソフトな方は、ポイントを伝えるところでは、短い文章できっぱりと言い切るように意識すると、ぐっと引き締まります。

声を魅力的にするには、発声練習や呼吸法も役立ちますが、笑顔でお話しするのが、手軽で効果的です。

その他、結論から先に話す、わかりやすい日常語を使う、文章を短くする、一つの文には要点を一つにするなどの工夫で、理解していただきやすくなります。

また、句読点の位置(一呼吸置く場所)で意味が変わってくる文章があることに注意して下さい。たとえば、次のような文章です。

A.「風の強い海岸で、子猫が、砂まみれになって転がっていくボールを追いかけている。」

B.「風の強い海岸で、子猫が砂まみれになって、転がっていくボールを追いかけている。」

Aでは、砂まみれになっているのはボールですね。ところが、Bでは、子猫が砂まみれになっています。

最後に、話すことを一語一句原稿にしないことです。原稿にすると、きき手ではなく、原稿に意識がいきます。手元には、キーワードだけが目に入るメモを用意なさるといいでしょう。
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