あなたの人生を輝かせるコミュニケーションの力
相手の立場にたつということ

1.コミュニケーションの流れ

第1章では、“自分が何者なのか”という問い掛けに対して、ひとつのヒントをご紹介しました。

第2章では、“人間関係・コミュニケーションの力”に関係するいくつかのヒントを、5つの項目にわけてご案内してまいりましょう。毎日、切れ目なく続く、仕事上、プライベートでの相対する方々とのコミュニケーションを、お互いにととってより実りある、効果的なものにするための具体的な手法を、ご一緒に考えていきたいと思います。

これらは、通常、コミュニケーション・スキルと呼ばれ、企業内研修でも、専門分野の教育とあいまって、車両の両輪のように大切なものです。そして、これらは、企業内にとどまらず、人とコミュニケーションをとる方すべてに役立ちます。

“相手の立場にたって〇〇しなさい。”幼い頃は両親や学校の先生から、社会に出てからは上司から、幾度となく聞かされた言葉ですね。全くもってもっともな言葉で、なんの反論の余地もないのですが、皆さんは、具体的に、これをどう表現(体現)していますか?従来の日本の文化の中では、“相手を慮る(おもんばかる)”というような美徳は、言動に表すというより、長いお付き合いの中でそこはかとなく滲みでてくる、察せられるものだったかもしれません。でも、相手が察してくれるまで待っていなくてもいいのではありませんか?これを、こちらから、言動に表したら、どうなるでしょうか?

ここ10数年、ビジネスの世界では、提案型営業、コンサルティングSE(システム・エンジニア)、双方向マネージメントなどという言葉に代表される仕事の進め方が主流です。これらは、一番シンプルに言えば、営業活動や、システム・エンジニアのお客さまとのコミュニケーション、部下のマネージメントなどを、“相手の立場にたって行う”としたら、具体的に何を言ったりやったりするのか、ということなのです。

相手の立場にたつ、ということは、相手がどう考え、何を感じているかを知って初めて効果的に実現できます。ですから、提案型営業、コンサルティングSE、双方向マネージメントなどのビジネス・コミュニケーションでは、お客さまや部下の心理、彼らのものの見方や考え方、感情をより的確に把握して、それに対してこちらがどのように対応し、導いていくかを考えます。

これから第2章でお話しすることは、“ビジネス・コミュニケーション”と、“日常のコミュニケーションのうち、目的があって行われるもの”を念頭においています。

“ビジネス・コミュニケーション”では、おもに営業担当者と、接客担当者、カスタマ・エンジニア、システム・エンジニア、マネージャーなどの仕事を例にお話しします。これらの仕事を例にとりながら、どんなお仕事にも共通に役立つやり方、技法、スキルをご案内しますので、皆さんは、是非ご自身のお仕事に置き換えて読んでみて下さい。

“日常のコミュニケーションのうち、目的があって行われるもの”とは、具体的にいえば、あなたが、何かをお伝えしたり、説明したり、お誘いしたりすることで、相手の方に同意していただいたり考え方を変えていただく、意見や助言、判断をしていただく、あるいは協力など行動に出ていただく、といったものです。

さて、それではこれらのコミュニケーションを、相手の立場にたって行う場合、相手の方の心理を考えると、次のような話の流れに従うと効果的です。

  @ 話のできる関係を作る
  A 相手を知る
  B それに応える
  C 合意する

それでは、これから@からCまでのそれぞれについて、それがどういうことか、それを行うとどのような効果があるか、実際にどのような言動でそれを表していくのか、を説明します。
| 1 | 話を聴くということへ