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9.ストレスなく相手と合わせるコツ

相手に合わせる、というと、自分を殺して、我慢して、無理をして、あるいは、相手の心の中を慮って、気を使って、という印象がありますね。でも、もうそれは、やめましょう。ここでは、もう少し、プラクティカルで、効果的な方法を考えます。

といっても、ソーシャル・スタイルを学んだ皆さんなら、もう、今までのところで、十分理解してしまっているかもしれません。

つまり、相手の方と接する時、その短い間だけ、自分の言動を相手のスタイルに、ちょっと近づける工夫をしてみるのです。

たとえば、今まではいつも同じ自分のペースだった話し方を、相手のスタイルを考えたペースにしてみるだけでも、相手の方は、今までのあなたに対する見方とは、違う見方をするようになるかもしれません。あるいは、同じ話でも、相手に合わせてその中に数字を入れたらいいのか、それとも楽しいエピソードを入れたらいいのか、などを工夫することは、そんなに難しいことではありませんが、効果は大きいでしょう。また、結果を重視する相手には結果を先に伝え、プロセスや論理を重視する相手にはその部分を丁寧に説明する、なども、あなたに対する相手の方の認識を変えるものとなるでしょう。

さて、これを実践するための、2つのヒントをお教えしましょう。

一つ目は、2つの切り口で学んだ思考表現度感情表現度の二つの軸を思い出し、自分のいる場所と相手のいる場所が違う軸はどこかを見極め、その部分を相手に合わせるのです。

たとえば、思考表現度が高い方が、低い方に合わせる場合は、2つの切り口(3.思考表現度とは)にある"低い方の特徴"をそなえた言動をとってみるのです。いつも、一番に口を開いているなら、他の人が一通り発言し終わるのを待って、ゆっくりと、問い掛けるように、ソフトな口調で話してみます。逆の場合も同じです。いつもはなかなか口を開かず、名指しされてやっと話す時も、遠慮がちに小さな声で、語尾を曖昧になさる方は、たとえ考えが纏まらなくても、思い切って誰よりも早く、とりあえず何か言ってみる、自信がなかろうと、短めの文章で、端的に言い切ってみる、声をくぐもらせず、大きく口を開けて滑舌を意識して、明瞭に声を前に出してみる、などです。

また、感情表現度も同様です。感情をよく表現する方が、そうではない方に合わせる時は、声の調子や、表情、手の動き、感情を表す言葉などを押さえ気味にして、仕事に特化した話の進め方を意識して下さい。憶測や、直観、人の意見を援用した話は避け、新聞記事や、統計数字、情報、データなど客観的な事実を織り込んで下さい。逆の場合も同じです。仕事の前の世間話は、無駄話ではなく、仕事の潤滑油と心得て、しばらく付き合ってみる、データばかりではなく人の意見や自分の主観も話してみる、微笑みを浮かべる、あまり固い雰囲気ではなく、ざっくばらんな態度を心がけてみる、などです。

両方の軸とも違う、正反対の相手の場合は、2つの軸ともに気をつけて下さい。

二つ目のヒントは、各スタイルの強み(2.アナリティカル/思考派のあなたの強みと弱み〜5.エクスプレッシブ/感覚派のあなたの強みと弱み)にある、そのスタイルが重要視するものを把握し、そこを尊重するような言動をとる、ということです。時間の使い方が計画的な方に対しては、待ち合わせには早めにゆく、可能な面会時間を確認し必ずそれより短めに終える、などです。

世間話から夢やビジョンを語ることがお得意の方には、それにお付き合いすることがまず大切ですが、そればかりに時間をとられて、本題が十分に話し合えない可能性も考え、後からでもお返事をいただけるような書類を用意することも、大切です。

このような合わせ方ですと、目に見えない相手の心理を読んだり、自分を殺すようなことにはなりませんので、ストレスなく実行することができ、また効果も期待できます。

ポイントは、合わせるのは、その方と接する間だけです。ミーティングの時間、一緒に過ごす時間だけです。これを常時やっていようと思うと、それこそ、ストレスが生じ、いい結果になりません。北陸のIT関連の企業に、セミナー・インストラクターとしてお邪魔した時、研修担当の方から、参加者の25人中22人がアナリティカル/思考派なので、アナリティカル/思考派になりきってやって下さい、と依頼されたことがありますが、朝から夜まで首尾よくなりきることができたのは、二日目まで。普通は数時間、と思って下さい。
| 9 | 第2章 自分を育てるへ