あなたの人生を輝かせるコミュニケーションの力
話を聴くということ

6.情報マイニング

きくことで得られる情報には、こちらのききたいことが、なんでもすぐに返ってくるという利点と、情報の範囲や内容が両者の思考の枠を出ず主観的だという弱点があります。

そこで、これを使っていくためには、得られた情報を、ちょっと料理する必要があります。それを、次の5つのポイントにまとめてご案内しましょう。  @情報を収集する
 A情報を分析する
 B情報の本質をとらえる
 C情報の出所を勘案する
 D総合的に考える

@情報を収集する
これからお話をきいていく時でも、事前に耳にしたり、調べることで、すでに得ている情報がありますね。これを、まずご本人に確認しましょう。新しい発見があるかもしれません。

また、ある程度の情報が事前にあるなら、自分なりの仮説をたててみるのもよいでしょう。言葉にすると大げさですが、日常、頭の中でよくやっていますね。仮説をもってお話を伺う時には、その仮説を裏付けてくれる事実があるかどうか、ということに重点を置きます。その事実がないようでしたら、仮説は、速やかに再構築しないと、話がおかしなことになりますから、気をつけて下さいね。

ビジネスの場合には、その仮説の精度を高めるために、エキスパートに意見を求めたり、業界動向、その会社の動向などに配慮することが必要です。

また、5W1Hを満遍なくきくことの必要性についてはお話しましたが、そこででてくる情報について、それがどういうことを意味するのか、その真意、価値は、ということまで踏み込めるといいですね。

さらに、自分がほしい情報がどうやったら得られるか、考えてみる必要があります。ほしい情報は、意外なところにあるものです。

A情報を分析する
こちらの問い掛けに応じて引き出された情報は、客観性に懸念があり、情報間の相互比較がしにくいといえます。そこで、情報間の類似点、矛盾点などに着目します。そして、どの情報が活用可能かを選択し、さらに検証が必要なところを明らかにしていきます。

また、情報に、意識的、無意識的を問わず、誇張や歪曲が入ることもその性質上ままありますので、そのあたりも気をつけて下さい。先日、あるTV番組に出演した際、10時間以上も収録したテープを15分に編集したのですが、そこで話しているのはたしかに“私”なのですが、あきらかに“私”ではない人物がそこにいて、放映を見た20年来の友人が、“あなたが、ああいう人だとは、20年付き合っていても知らなかった!”と、電話をかけてきました。このような情報の省略も、ときに事実から遠く離れてしまうのです。

これは、およそいつでも忘れてはならないことですが、情報の中で、事実と意見、現状とのぞむ姿、結論と裏付けなどを、きちんと分けて考えるクセをつけて下さいね。

B情報の本質をとらえる
さて、ここまでくると、判断の基礎にできるだけの客観性と妥当性をもった情報が、きちんと分析されてまな板の上に乗っている状態です。この中から、本質をとらえる、必要なエッセンスを抽出するのは、エキサイティングなプロセスです。

ただ眺めているより、いろいろな切り口で加工しいくつかのグラフやチャートをつくってみると、しだいに情報が口を開き始めます。

ここで一つ気をつけたいのは、自分の思考パターンや行動パターン、好み、感情などを認識して下さい。そういったことが、情報処理にどう影響するかを知っておくことは、大切なことです。

C情報の出所を勘案する
きくことで得られる情報には、かなり属人的なものがあります。“〇〇という製品を、どう思いますか?”と問い掛けてみましょう。ある方は、その製品の技術的側面、スペック、仕様、機能などについてとうとうとお話しになります。別の方は、自分が好きか嫌いか、ユニークかどこにでもあるものか、ということばかりに興味があるようです。また、その製品の評判や、それについて誰がどう言ってるということが気になる方や、費用対効果が最大の関心事である方もいらっしゃるでしょう。つまり、どの方から得られる情報も、個性や偏りがあるのです。ですから、情報が誰から得られたものなのかを勘案する必要があります。

まず、人は、その方の立場でものをおっしゃることがありますから、その方のお仕事や役割上大切なことは、強調されてでてくることでしょう。

また、その方の、個性、特性からも、興味、関心が異なってきます。これを勘案するには、ソーシャル・スタイル理論が役に立ちます。そのようなことを意識せず、手にした限られた情報をすべてと思って考えると、本質を見誤りかねません。

D総合的に考える
最後にもう一度、振り返ってみて下さい。たとえば、プロジェクト・チームを組んで一つの仕事を分担しながら進めている時、自分達のチームの情報だけではなく、他のチームとの関係に気を配って下さいね。

過去の同じような経験と比較、対比してみたり、自分の姿勢や感じ方を相手の立場におきかえてみたり、近未来も視野に入れてみることなども効果的です。

本来、人は、相当な注意を払わなければ、相手と同じ認識に到達するということは、不可能なのです。“海”という言葉一つでも、ある方は、自分の生まれ育った静かで優しい瀬戸内海を思い浮かべるでしょう。海のない地方で育った別の方は、今まで見た中で一番美しかったカリブ海を無意識に思うかもしれません。そこのところを認識することが、グッドコミュニケーターになる一つの秘訣です。
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